お正月期間中に映画『鈴木先生』をやっていた。
深夜ドラマでやってた時から大ファンなのだが、
深夜枠の時は、視聴率わずか5%ぐらいしか
なかったらしい。
個人的には、学園ものはあまり好みではない
のだが、たまたまTVを付けた時にやってた
『鈴木先生』には、釘付けになってしまった。
ストーリーは公式サイトで確認してほしいのだが
http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/
簡単に言うと、長谷川博己さん演じる国語教師
の鈴木先生が、自分の教育理論を自分のクラス
で実践しながら、生徒たちがどのように変化して
いくのかを実験する…という感じのストーリーだ。
セリフ回しなんかが、斬新で、かなり面白い。
また、鈴木先生が想いを寄せる、土屋太鳳さん
演じる女子生徒の小川蘇美との妄想シーンも
かなり笑える。
さて、やっと映画の話になるが、映画の中で
こんなシーンがあった。
卒業生の勝野ゆうじが、学生服を着て、生徒会
役員選挙の日に学校に紛れ込み、小川蘇美に
ナイフを突きつけ、彼女をレイプすると脅迫する。
なぜ彼がそのような行動をとったのかと言うと、
彼は、先生の言われるままに、真面目に勉強し、
先生の怒られるような行動を取ることもなく、
模範的な生き方をしてきたのだという。
だが、社会に出た途端、うまく社会に溶け込む
ことができず、引きこもりのような生活を送って
いた。
逆に、学生時代、先生の言うこともきかず、暴力
をふるっていたいたような不良や、たくさんの男
たちとやりまくっていた女生徒などが、会社社長
になっていたり、ドクター夫人になって優雅な生活
を送っていたりする。
真面目に生きていた自分たちが報われず、
不真面目だった奴らが成功している社会の責任
は、すべて誤った学校教育にある…
というのが彼の主張だった。
彼の気持ちは分からなくはない。
おそらく、若い頃の僕ならきっと賛同していた
だろうと思う。
だが、僕は税理士事務所に20年勤務した経験
があり、たくさんの経営者の方たちと接してきた。
だから、彼の主張は正しくないと断言できる。
どこが正しくないのか。
誤った学校教育。
これは、まさにその通りだと思う。
誰かが言っていたが、今の日本の学校教育は
『労働者製造プログラム』だと。
つまり、会社に勤め、会社の指示通りに行動し、
会社から給料をもらう。
そういう人間を育てる場になっているということ
だ。
だが、不良たちはどうだろう。
そのプログラムを無視してきた結果、労働者
になるよう育てられた真面目な生徒たちとは、
全く異なる思考回路を育てることができ、その
異なる思考によって、社会の荒波を超えて
きた人たちだ。
私の知る優れた経営者の方たちの多くは、
高学歴でもなく、優等生でもなかった(本人
たちの談)らしい。
会社を経営するというのは、並大抵なことでは
ない。
分かりやすく飲食店に例えると、労働者育成
プログラムに育てられた真面目な人たちは、
マニュアル通りに、綺麗なお店、しっかりした
接客、美味しい料理・・・
そんな店が繁盛すると考えるだろう。
だが、はっきりいって、そんな店は山ほどあり、
面白くも何ともなく、興味すら惹かれない。
つまり、儲かりっこないのである。
(それぞれの要素が、超一流のお店は当然
儲かっているわけだが・・・)
逆に儲かっているお店は、そんなセオリー無視
の、個性の塊みたいお店が多い。
よくある芸能人の人気ランキングを見て分かる
ように、人気のある芸能人は、嫌いな芸能人
ランキングに入っていることが多い。
つまり、人から嫌われるぐらいの強烈な個性を
打ち出せなければ、人気も出ないのだと思う。
ちょっと脱線したので、話を戻すと・・・
彼の主張の誤りはここにあるのだと思う。
労働者育成プログラムに沿って育てられた
真面目な生徒は、会社という組織に入ることが
できなければ、生きていく術を持ち合わせて
いないということである。
ドラマの中で、不良少年だった卒業生が学校
を訪ねてきて、鈴木先生にこう言っていた。
「鈴木先生は、真面目な優等生ばかり大事に
してて、俺ら不良のことは全然相手にして
なかったからな」と。
だが、鈴木先生の教育論はこうだった。
不良少年たちは、自己主張をすることができ、
社会に出てからのことを、あまり不安に感じない。
だが、一番心配なのは、先生の言われるがまま
に生きている、真面目な生徒たちだ。
自己主張をせず、人の顔色を伺いながら、良い
子を演じている彼らこそ、社会に出てからちゃん
と生きて行けるのか心配だと。
だからこそ、真面目な生徒にこそ目を掛けて
やるべきなのだと。
ニュースなど観ていて感じるのだが、現代は、
パッと見、真面目そうな子たちが陰湿なイジメを
していたり、想像もできないような残酷な殺人を
犯したりしている。
それを考えると、ますます、鈴木先生が語って
いた教育論に説得力を感じずにはいられなかった。
ちなみに、僕はあのドラマで土屋太鳳さんを
初めて知り、とても興味を持った。
あれから、さまざまな映画やドラマに出演され、
今や人気女優の仲間入りをしている。
とても嬉しい限りである。